【日本の暦と宇宙の関係】3月の和名「弥生」の由来
季節が変わる。それは宇宙と地球の関係に変化がしているということ。
こんなシンプルで奥が深いことに、日本人は古代から気付いていたのです。その事を、教えてくれるのが、月ごとに名づけられた和名です。
この記事では、3月の和名「弥生」の由来についてご紹介します。
3月の和名「弥生」の由来
語源由来辞典によると「弥生」の由来は
弥生(いやおい)」が変化したものとされる。
「弥(いや)」は、「いよいよ」「ますます」などの意味。
「生(おい)」は、「生い茂る」と使われるように草木が芽吹くことを意味する。
草木がだんだん芽吹く月であることから、弥生となった。© 語源由来辞典
とあります。しかし、草木が芽吹く季節を「弥生」と呼ぶならば、3月上旬は少し早すぎる感じがしますね。それもそのはず、旧暦の3月と新暦の3月では時期にずれがあり、「弥生」は新暦の3月下旬から5月上旬にあたります。
いつ頃からこの言葉が使われていたかは不明ですが、このことから当時の日本人が数字ではなく、「自然」とともに生きていたことが分かります。
以前、「虚数の情緒」という本を読んだ事がありますが、よほど数学の本質を理解している人でなければ「数字」に「情緒」を感じることは難しいと感じました。
その点、日本の旧暦の「和名」は自然とともに生きてきたご先祖様のDNAの記憶が心に残っており、現代の日本人でも、心と調和する言葉の響きに情緒を感じる人も少なくないのではないかと思います。
美しい大和言葉
ちなみに、この言葉がいつから使われていたか分からないと書きましたが、弥生(いやよい・やよい)は漢字には珍しい訓読みなので、大和言葉なのではないかと思いました。調べてみるとそれは当たっていたようで、実際に発音してみると、大和言葉らしい和やかで美しい響きが感じられます。
大和言葉について一番詳しく記載している辞書を見つけたので、紹介したいと思います。
日本語を構成する要素で、漢語、外来語に対し、奈良時代以前からあった日本固有の言葉「和語」のこと。和詞(やまとことば)とも言う。漢字の訓読みが大和言葉に対応する。特徴としては、擬声語以外は語頭に濁音・半濁音が来ない、古語の語頭の音が落ちた結果であり、語頭にラ行音が来ない、合成語が作られる際、語形変化が起こる、など。東海道新幹線の車名が大和言葉でつけられてきたというエピソードが報道され、話題となった。
弥生にちなんだ俳句
どの俳句も「弥生」の季節をしみじみと感じさせてくれる作品ばかりです。月を望みながら、口ずさんでみたくなります。
妻や子に看取られて病める弥生かな 作・吉武月次郎
群星のあちらこちらの弥生かな 作・原石鼎(はらせきてい)
降りつづく弥生半ばとなりにけり 作・高浜虚子
襖絵を弥生なかばの日が移る 作・水原秋桜子(みずはらしゅうおうし)
春もはや弥生となりて老いにけり 作・正岡子規
俳句はわりと簡単に作れるので、自分でオリジナリティーあふれる俳句を大和言葉で作ってみて、発音してみるのも良いと思います。
大和言葉は発音した瞬間に場の空気を和やかにしてくれます。それは、私たちが普段何気なく使っている言葉にも含まれています。
しかし、普段から意識している人は少ないことでしょう。この言葉の響きを意識することは、ひょっとしたら、私たち現代人の忙しい生活には欠けている「何か」に気付くことなのかもしれまんせん。